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していく。気泡流領域ではPEOを添加した場合に揚水量が増加している。PEOを添加した場合の管路平均ボイド率fG(気体断面積/管断面積)を、Fig.8に示す。Fig.8に示すように管路平均ボイド率に及ぼすPEO添加の影響はほとんど認められず、Fig.7に示すPEO添加による揚水量の増大は主として流動抵抗の減少によるものと考えることができる。

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Fig.7 Characteristics of gas-lift pump

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Fig.8 Characteristics of gas-lift pump

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Fig.9 Characteristics of air-lift pump using annular nozzle

供給気体量を増していった場合の揚水特性をFig.9に示す。ここに領域I、?、?と?はそれぞれ電解発生気泡ポンプによる気泡流領域、コンプレッサーを用いた気泡ポンプによるスラグ流領域、フロス流領域、環状流領域を示している。供給気体量QGが増していくと揚水量QLはスラグ流とフロス流の境界付近で最大となり、この領域の流れが気泡ポンプに最も有利であることが結論されるなお、PEO添加はFig.7に示すように気泡流傾城では有効であるが、スラグ流以降の領域ではFig.9に示すようにむしろ揚水特性を悪化させていることに注意する。これは管摩擦抵抗はPEO添加により減少するが、それ以上に表面張力の増大により気泡の形状が変化するために揚水駆動力が減少するためと考えられる。この間の事情については今後の研究に待ちたい。
4−4. 気泡ポンプにおける管摩擦損失
単相流と昊なって気液二相流の場合には流動様式が変化していくために管摩擦係数で整理することが困難であるので、気泡流領域での気液二相流の圧力損失を気液二相流の圧力損失と液単相の圧力損失との比でFig.10に示す。電解発生気泡ポンプによる単純な気泡流の場合にはFig.10に示すように気体発生部以降円管の約150直径の助走距離を経て定常状態となっている。このことは他のスラグ流、フロス流、環状流の場合にも同様に助走区間は気泡発生部以降約150直径であるなお、気泡流の場合には助走区間内でもFig.10に示すようにPE0を添加することにより大幅に摩擦損失を低下させていることに注意する。助走区間以降ではFig.12に示すように管摩擦損失はPE0添加により約30%低下している。
コンプレッサーを用いた気泡ポンプの場合の単位長さ当たりの管摩擦損失をFig.11に示す。ここに領域?は気泡流、領域?、?、?はそれぞれスラグ流、フロス流、環状流を表している。なお気泡流部分を拡大してFig.12に示す。PEOを添加することによりスラグ流からフロス流に遷移するとき管摩擦損失の低減率は低下してPE0の効果はほとんどなくなるが、環状流になるとPE0添加により管摩擦損失は約10〜20%低下するこのことはFig.9に示す揚水量の増加に対応している。しかし、前述したようにFig.9で浸水率が小さい場合にPEO添加により揚水量が増加しない理由は不明であるそこで参考のため、スラグ流以降の流動様式に対してLockhart&Martinelliによる摩擦損失の式と比較して、Fig.13、Fig.14に示しておく。ここにφLとXはそれぞれ実際の圧力損失と液単相での圧力損失との比と液単相の圧力損失と気相の圧力損失との比を表す。人工海水の場合にはFig.13に示すようにスラグ流以降の流動様式が気相、液相ともに乱流になっているのに対して、PEOを添加した人工海水の場合にはFig.14に示すように気相は層流であるが液相は乱流になっていることになる。一般にPE0添加は層流城の管摩擦損失は低減させないが乱流域の管摩擦損失は大きく低減させることが知られているので、PEO添加は液相が乱流の場合には供給気体量の多少に拘わらず管摩擦損失を低減させているものと考えられる。他方、PEO添加は気液界面の表面張力を小さくし発生気体の曲率半径を小さくするので、それに伴う揚水原動力の低下の方がPEO添加による管摩擦損失の低減を上回った場合にはFig.9に示すように揚水量を増加させないことになっているものと考えられる。

 

 

 

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